バルト三国の一つ、リトアニア共和国から輸出されたラム酒(ダークラム)が昨年12月下旬、中国で通関拒否されるという事件が発生した。台湾の酒造大手である台湾菸酒公司(TTL)はこの事実を知り、路頭に迷っていたラム酒2万400本をすべて購入することを決めた。ラム酒は今月9日に台湾の港に到着し、月末には販売できるという。台湾菸酒公司は「市場の反応によっては、リトアニア側と長期的な提携を結ぶ可能性も排除しない」としている。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が発生する中、台湾はリトアニアに医療用マスク10万枚を供与。そのお礼として、リトアニアからアストラゼネカ製新型コロナウイルスワクチン2万回分が台湾に供与された。双方は昨年11月、相互に代表機関を設置。台湾側がリトアニアに開設した「台湾駐リトアニア代表処」は、欧州で初めて「台湾」の名を冠した代表機関となった。正式な外交関係はないものの、その後も台湾とリトアニアは友好関係を深めている。一方、これに反発する中国は、リトアニアに対する政治・経済的圧力を強めている。
台湾菸酒公司の丁彦哲董事長は、「中国がリトアニアに対して外交や経済・貿易方面で圧力を加えているのは、リトアニアが台湾との友好関係を深めていることと関係している。台湾菸酒公司は台湾の国営企業として、リトアニアを苦境から救う責任があると考えた」と話す。しかも、ダークラムは台湾でも高い市場性を持つ。こうしたことを踏まえ、丁彦哲董事長は早急に支援の手を差し伸べ、リトアニア産のラム酒を台湾で販売することを決めた。
丁彦哲董事長によると、昨年12月18日、財政部(日本の財務省に相当)からリトアニアのMV Group Productionが輸出したリトアニア産ラム酒(ダークラム)2万400本が中国で通関拒否され、海上で路頭に迷っているとの知らせを受けた。そこで台湾菸酒公司は直ちにMV社と連絡を取り、詳細について検討した結果、すべて購入することを決めた。その後、電子メールで正式な契約を交わした。台湾菸酒公司は商談と同時に、繁体字中国語のラベル、紙箱、手提げ袋などのデザインにも取り掛かった。
台湾菸酒公司は3日、リトアニア産ラム酒を台湾で輸入・販売することを発表した。すると購入を希望する多くの消費者から問い合わせがあったという。丁彦哲董事長は、最近台湾ではリトアニア産のビールやチョコレートに対する受容性が高まっていることから、経済・貿易方面の交流においても互恵関係を深められる可能性があると見ている。
丁彦哲董事長はまた、一度商品を輸入するだけでは中国から長期的な経済制裁を受けるリトアニアの問題解決にはつながらないとも考えている。このため、リトアニア側と長期的な提携を結ぶ可能性も模索している。丁彦哲董事長は、「今回輸入するダークラムの市場での受容性が高ければ、これが提携の良いスタートとなるかもしれない」と期待を寄せている。